一人の人間が知り得ることはそこまで多くはないと思う。
だから、まだまだ知らないことは世の中にたくさんある。
私も。
心理の勉強はしているけれど、他人の心ははっきり言って分からない。
明日のことも分からないし、身近な人の気持ちも、その辺に生えている草の名前も分からない。
だから、怖かったりする。突然、恐ろしくなる。
知らないことは怖いんだ。
今日は。
そんなことを思った。
毎日顔を合わせていても、その人の本心はそう分かることはない。
毎日使っている道具も、どれだけの力で壊れるか分からない。
さっきすれ違った顔も知らないおじさんが何を考えていたか知らない。
いつも立ち寄るコンビニの店員さんの名前も住んでいるところも犯罪歴も知らない。
世の中、分からないことだらけ。
でもそれが面白い。
食うか食われるかで世の中を見てしまっている私は、他人からどう見られているのか分からない。
たまに、こういう無知な自分に酷く悲しくなる。
感性の問題なのだけれど、だからこそ努力を重ねるのかもしれない。
世の中じゃんけんのように、出せる武器は決まっていない。
じゃんけんポン、でナイフを出してくる輩がいれば、素敵な花束をサッと出す紳士もいる。
そんななんでもありのじゃんけんのようなやり取りを、人間は毎日、毎分、何度も何度も繰り広げるんだ。
自分は何を出せるのか。
相手が手からイグアナを出してきたら、自分はネズミを差し出そう。
そんなことを考えて、本屋に向かい明日の武器を探す。
私は、そんなことを考えている。
弱みを探すな。強みを磨け。
病んでるならなおさら。
私のような人種は、武器の鋭さでは他人に敵わない。
トカゲが尻尾を切って見せるように。
アッと驚かせてその隙に逃げろ。
そして逃げたと思わせて後ろから膝カックンして勝ち誇る。
今日はそんな思考に支配されている。
武器を、強みを磨くのは自分自身で。
他の誰も関係はない。
なんて。